子宮頸がんは20歳~40歳に多いがんです。
「がんって高齢者の病気じゃないの?」
っておもっている方がほとんどだとおもいますが、
子宮頸がんはそうではありません。
他のほとんどのがんとはちがって、
ヒトパピローマウイルスの感染によって発症する
という性質があります。
若いときにヒトパピローマウイルスに感染してしまうと、若くして子宮頸がんになるリスクが高まる、
ということです。
この記事では、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスという病原体について解説していきます。
なんと、ヒトパピローマウイルスはノーベル賞を受賞していたっ!??
目次
ヒトパピローマウイルスと子宮頸がん【HPV】
ヒトパピローマウイルスってどんなウイルス?
ヒトパピローマウイルスの名前の由来
ヒトパピローマウイルスはHPVと略されます。
「エイチピーブイ」と読みます。
HPVは英語のHuman Papilloma Virusの頭文字をとったものです。
パピローマとは乳頭腫というイボのことです。
乳頭腫というイボをつくるウイルスであることから、その名がつけられました。
HPVの名前の由来は乳頭腫というイボからきている
ヒトパピローマウイルスの「ヒト」の部分って必要なの?
ヒトパピローマウイルスの「ヒト」の部分ですが、なんとなくいらない感がありますよね。
でも必要な部分なんです。
ウイルスは感染する生物を選びます。
その感染される生物のことを宿主(しゅくしゅ)といいます。
パピローマウイルスの中にも牛にしか感染しないものがいます。
ご想像のとおり、そのウイルスは「ウシパピローマウイルス」、というわけです。
「ヒトが宿主になっているウイルスだよ」というウイルスの特徴を示すために、HPVの「ヒト」の部分は大切なのです。
ウイルスは特定の宿主を持つ
ヒトパピローマウイルスの「ヒト」の部分はウイルスの宿主を表している
ついでに、ウイルスと宿主の話の続き 【例】鳥インフルエンザ
HPVとは関係ありませんが、ウイルスと宿主の話が出てきたので、ちょっとそれに関する小ネタも書いてみようと思います。
なんらかの原因でウイルスが本来の宿主ではない生物に感染すると、その生物にとってはそのウイルスとは初めて共存することになります。
そうなると、ウイルスとの共存にうまく対処することができずに、致命的な感染症を引き起こすことになります。
その例が、鳥インフルエンザです。
「鳥インフルエンザだってインフルエンザなんだからそんなに怖くないでしょ?」
と思っているのは大間違いです。
もう1つ例を出します。
元々ヒトが宿主ではないコロナウイルスがヒトに蔓延してしまって、とんでもない世界的な大流行になっていますね。
宿主ではない生物にウイルスが感染しはじめるということは、とてもおそろしいことなのです。
ウイルスなど感染症について考える上で、病原体と宿主の関係というものはとても重要なのです。
本来ヒトが宿主ではないウイルスの感染が蔓延すると、世界的大流行を引き起こすおそれがある
これで脱線おわりです。また、HPVの話にもどりましょう。
ヒトパピローマウイルスとノーベル賞
実は、HPVと子宮頸がんとの関係というのはノーベル生理学・医学賞を受賞した偉大な実績なのです。
ハラルド・ツァ・ハウゼン氏(Harald zur Hausen, 1936年3月11日-)はドイツのウイルス学者です。
HPVには150種類以上のタイプが存在しているのですが、ハウゼン氏は1983年に子宮頸がんからHPV16を、1984年にHPV18を発見しました。
子宮頸がんがHPVにより引き起こされることをつきとめたため、2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞したのです。
この研究成果により開発されたのがHPVワクチンです。
子宮頸がんとHPVの関係は2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞した偉大な実績である
HPVワクチンについては、以下の記事を読んでみてください。
2021年2月24日に発売された新しいHPVワクチンについても解説しています。
まとめ
この記事ではヒトパピローマウイルス(HPV)について書いてみました。
ついでに、ウイルスと宿主についてもちょっと書いてみましたが、どうだったでしょうか?
子宮頸がんとHPVの関係がノーベル賞をとった実績ということは知らなかった方も多いと思います。
今の産婦人科では当たり前になっていることでも、そこにはすごい研究が基礎となっているものがあるのです。