HPVとは、ヒトパピローマウイルスのことです。
子宮頸がんはHPVというウイルスの感染が原因と言われています。
「HPVにかからないようにすれば、子宮頸がんを予防できる」
ということです。
理屈はとてもシンプルですね。
この記事では、
ヒトパピローマウイルスの感染を防ぐ方法
について解説していきたいと思います。
HPVと子宮頸がんの関係については以下の記事を読んでみてください。
目次
HPVの感染を防ぐ方法【子宮頸がんを予防する】
病原体の感染予防について考えるためには、
感染経路 : 病原体がどこからどのように侵入したのか
まずは、この「感染経路」なるものについて知っておいた方がよいです。
「HPVがどのように感染するのか」を説明してから、「感染を予防する方法」について書いていこうと思います。
HPVはどのように感染するのか【感染経路】
HPVは
皮膚や粘膜の濃厚な接触
によって感染します。「濃厚な」というところがポイントです。
ちょっと接触しただけではうつりませんので、お風呂やプールでの感染は起こしません。
HPVは子宮頸部の「上皮(じょうひ)」という表面の組織に感染するのですが、その表面にある上皮の一番深い部分に定着します。
HPVが上皮の深部にたどり着くためには、キズが必要になります。
ウイルスはとっても小さいので、血が出るほどの大きなキズは必要ありません。
目には見えないほどのすっごく小さなキズから入り込んでいくのです。
セックスをすると、互いの生殖器の皮膚や粘膜どうしが密着してこすれ合います。
そのときにできた目には見えない小さなキズを介してHPVは感染してしまいます。
また、HPVは子宮頸部以外にも、皮膚、口の中、のど、肛門、腟、外陰部、陰茎にも感染を起こすことが知られています。
・HPVは性的接触など、皮膚や粘膜どうしの濃厚な接触により感染する
子宮頸がんは「性感染症」なのか
「セックスで感染するHPVが原因というなら子宮頸がんは性感染症なのではないか?」
という疑問が出てきそうなので解説しておきます。
性感染症を指す医学用語は2つあります。
- STD:Sexually Transmitted Diseases
- STI:Sexually Transmitted Infections
STDは性行為による感染によって早期に症状が出現し、発病した状態にあるものを指します。
STIはSTDよりも幅広い考え方で、自覚症状のないものを含めた性的接触による感染症を指します。
子宮頸がんについて言えば、HPVが感染しても大部分ががんになるわけではありません。
感染するとがんになるリスクは高くなりますが、自然にHPV感染が治ってしまうことも多いです。
そしてゆっくりゆっくり数年かけてがんとなります。
なのでSTDではないと言えます。
しかし、性的接触を介して感染するには違いないのでSTIです。
同じくHPVが原因となる尖圭コンジローマは感染すると早期に特徴的なイボができますので、STDでありSTIでもあります。
「子宮頸がんが性感染症かどうか」について、私の答えは、
「定義によりことなる。性感染症とされることもあるし性感染症とされないこともある。」
としておきます。
加えて言っておくと、この疑問は本質的なものではありません。
「性感染症」というネガティブなイメージの名称がつけられるかつけられないか、というだけにすぎません。
「HPVの感染により子宮頸がんは起こりやすく、HPVの感染は性的接触で発生しやすい」
この事実だけ抑えておいてもらえば十分だと思います。
・HPVの感染が原因の子宮頸がんはSTDではないがSTIではある。
・子宮頸がんは性感染症かどうかについては、定義により異なるが、それは本質的な問題ではない。
HPVの感染を予防する方法【感染防御】
ここからはHPVの感染を予防する方法について解説していきます。
HPVの感染を防ぐ方法は2つあります。
・感染経路を断つ
・ワクチンを接種する【抗体を作る】
それぞれ項目にわけて説明していこうと思います。
感染経路を断つ
HPVが感染しないようにするためには、入ってこないようにすればよいのです。
前述したようなHPVの感染経路である「性的接触による皮膚や粘膜の濃厚な接触」をしないようにすれば感染を防ぐことができます。
感染経路を断つ上でできることはこの3つになるでしょう。
- コンドーム
- 不特定多数の相手とのセックスをしない
- セックスをしない
それぞれについて感染経路を断つ効果や困難な点を項目ごとに書いていこうと思います。
コンドーム
コンドームはラテックスやポリウレタンなどの薄い膜でできた避妊や性感染症を防ぐために用いられるものです。
主に男性のペニスに装着して使用するものですが、女性用のコンドームも存在します。
コンドームのメリットはセックスをするときに装着するだけでよいという手軽さにあります。
HPVの感染予防の観点からすると、確かに薄い膜を介することで粘膜どうしの接触を防ぐことができるので、それなりの感染予防の効果はあります。
しかし、破損する危険性があることと取り外すときに接触を引き起こす可能性があるため、これだけでは少し不安があります。
コンドームだけで万全とは言えませんが、お互いの接触を防ぐことはできるので装着する意義はあります。
不特定多数の相手とのセックスをしない
多くの相手とセックスの機会があるほどHPVの感染の危険性が高まります。
やみくもに知らない相手とやりまくるのが一番危険です。
この場合、HPVの感染だけではなく、他の感染症や予期しない妊娠のリスクもありますのでやめておいてください。
お互いに決まった相手とだけセックスをするようにしておけば、HPVの感染の危険性はかなり低くなります。
しかし、現在の社会背景として恋愛結婚が主流になっています。
以前のようにお見合い結婚で、結婚するまでだれともセックスをしていないし、結婚した後も夫や妻だけというような人は少数派だと思います。
恋愛結婚では、いい人をみつけるまでいろんな人と恋愛をすることになります。
そうなると、結果として、不特定ではなくとも多数と接触することになってしまうことはどうしてもあるでしょう。
恋愛結婚の文化では、多数と性的な接触をすることになりやすいように思います。
セックスをしない
性的接触がなければHPVの感染もありませんので、感染経路を断つというのであれば、これ以上に良い方法はありません。
しかし、セックスは子供を作るときにはする必要がありますし、夫婦やカップルの愛情を確かめ合うのに大切な行為の1つでもありますので、全くしないようにするのはかなり難しいと思います。
感染経路を断つ3つの方法について解説しました。
HPVの感染を防ぐために「感染経路を断つ」をみんながちゃんと実践するには相当な困難があります。
それは、人間が子孫を残そうとする限り、性的接触はなくならないからです。
したがって、「感染経路を断つ」これだけではHPVの感染を防ぐことはできないでしょう。
ワクチンを接種する【抗体を作る】
感染しないようにするには「抗体を作る」という方法があります。
それがワクチンです。
抗体というのは、病原体が体に侵入したら撃退してくれるタンパク質です。
ワクチンを接種することにより、病原体が体に入る前にすでに抗体ができている状態になります。
こうすることで、感染経路を断つことに失敗して病原体が体に入りこんできたとしても感染の成立をくいとめることができる、というわけです。
HPVにもワクチンが存在します。
HPVワクチンをあらかじめ接種しておくことにより抗体ができれば、子宮頸がんになりやすいHPVの感染を未然に防ぐことが可能になります。
HPVワクチンについては以下の記事にまとめてありますので、ぜひ読んでみてください。
まとめ
HPVの感染を防ぐ方法についてまとめてきました。
HPVの感染により子宮頸がんになるリスクが高まりますので、HPVをさけることができれば自然に子宮頸がんを予防できます。
HPVは性的接触により感染しますので、とにかく、
「感染経路を断つこと」と「ワクチンを接種すること」
この2つが重要になります。
2つともできる人は2つともやるのが最もよいです。
どちらかしかできないという人はどちらかでもいいのでやってください。
なにもやらないよりはいいです。
無防備にHPVに感染して当然のように子宮頸がんになってしまうことだけはさけてください。
ここまで読んできて、
「子宮頸がんを予防するには子宮がん検診を受けていればいいんじゃないの?」
と思っている方もいるのではないですか?
この答えについては次の記事に書こうと思います。