子宮がん検診は2年に1度は受けることを推奨されています。
また、子宮頸がんの症状の1つである不正性器出血(通常の月経以外の性器出血)や性交時出血(性交の最中または性交直後の性器出血)がある方は、産婦人科に行って検査を受けることをお勧めします。
子宮がん検診で異常あり(要精査、要精検など)の結果だった方は、
コルポスコピー・生検
を受ける可能性が高いです。
コルポスコピーのことを産婦人科医は略して「コルポ」といいます。
産婦人科医はコルポスコピーのことを「コルポ」と呼ぶ
この記事では、コルポスコピー・生検は「どんな検査なの?」について解説します。
「そもそもなんで子宮がん検診を受けないといけないの??」と思っている方は、
この記事を読み進める前に、まずは以下の記事を読んでみてください。
コルポスコピー・生検について解説します【精密検査】
コルポスコピー・生検ってどんな検査なの?
まず「コルポスコピー・生検」という名称ですが、これは産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020にこのように記載されているため、当ブログでも同様に記述しました.
ですが実際には、”コルポスコピー”と”生検”というのは同じものではありません。
コルポスコピー ≠ 生検
しかし、コルポスコピーを行うときは生検も行うことが多いので、産婦人科医が外来で「コルポします」と言ったらだいたい「コルポ+生検」を指します。(産婦人科の外来で働いている看護師さんはよくわかるかもしれませんね)
本来はコルポスコピーと生検はちがうものなので、まずはそれぞれを別々に説明して、最後にコルポスコピー・生検の手順について説明していきます。
コルポスコピーとは?
コルポスコピーとは、
子宮頸部をコルポスコープという拡大鏡をつかって拡大、観察することによって、子宮頸部病変の程度と広がりを診断する検査
と定義されます。
↑これがコルポスコープです。
この拡大鏡で、異常のある部分を観察します。
コルポスコープなしには、子宮がん検診(子宮頸がん)の精密検査は成り立ちません。
とても大切な道具の1つです。
続いて、どのような手順で検査を進めていくか、解説します。
コルポスコピーの手順
コルポスコピーの手順を箇条書きにしてみます。
- 内診台にのる
- 黒いクスコ(腟鏡)で子宮頸部(子宮の入り口)をみえるようにする
- 綿球などで粘液を除き、コルポスコープで観察する
- 3%酢酸に子宮頸部をひたしてからコルポスコープで観察する
- 必要があれば写真撮影を行い記録する
- 検査所見のシェーマ(絵)を書く
ここからは、この手順の中の細かい部分を説明してきましょう。
黒いクスコを使います
普段、産婦人科の診察ではシルバーのクスコを使います。
しかし、コルポスコープを使用すると、いつもの診察よりも強い光を当てるため、シルバーだと光が反射して子宮頸部の観察がしにくくなってしまいます。
コルポスコープからの光が反射して見にくくならないように黒いクスコを使っています。
粘液をふき取ってからコルポスコープで観察する
子宮の入り口に粘液がついていると観察できないので、綿球などでふきとってからコルポスコープで観察します。
このときにつよくふき取ってしまうと、異常のある部分までとれてしまってちゃんとした結果がでないおそれがあるので、慎重にやさしくふきとるようにしています。
粘液が付着していなければ、ふき取らずにそのままコルポスコープで観察します。
まずなにも加工しない状態で観察します。
このあとで緑色フィルターを使い、緑の光をあてることによって、異常な血管がないかどうか、観察することもあります。
3%酢酸にひたすと病変部が浮かび上がってくる
酢酸(さくさん)とは「お酢」のことです。
このお酢でひたすことを「酢酸加工」といいます。
酢酸加工をすると、病変部が白く濁って浮かび上がって見やすくなります。
なにも加工しないで観察したときの状態と比べることによって、どこに異常があるのかをつきとめるのです。
数秒ひたしてから観察したり、1~2分ほどひたしてから観察したりして、どこが・どのように変化をするのか、しっかりと観察します。
よくみるために、何度もひたしては観察してを繰り返すこともあります。
必要があれば写真撮影を行い記録する
コルポスピーはレントゲンやCT検査と同じように、画像検査の1つと考えてもらってよいです。
そのためコルポスコピーを行ったら子宮頸部の写真をとり、残しておきます。
写真をとって残すことは義務付けられているわけではないため、シェーマ(絵)だけを書いて残す病院もあると思います。
検査所見をシェーマ(絵)を書く
検査をして得られた結果のことを「所見(しょけん)」といいます。
得られた結果を書いた簡単な絵のことを「シェーマ」といいます。
コルポスコピーの画像そのままよりも、シェーマに異常な所見を書くことによって、視覚的にぱっとみてどこにどんな異常があったか、わかりやすくなることがよい点です。
これを書くことにより、
・いつだれが見てもどこにどんな異常があったのかがすぐにわかる
・手術(円錐切除術)のときの切除範囲の参考になる
というメリットがあります。
コルポスコピーのシェーマの書き方は決まったものがあります。
機会があれば別の記事にしたいと思います。
円錐切除術についても今後記事にしたいと思っています。
生検とは?
生検とは、
病変(組織)の一部を切り取って、顕微鏡で調べる検査
と定義されます。
生検は、組織診とも呼ばれています。生検=組織診です。
細胞診は子宮がん検診で、組織診は精密検査で行われます。
「細胞診と組織診の違い」については別の記事で書きたいと思っています。
子宮がん検診の精密検査で行われる生検の正式名称は「子宮頸部組織診」です。
長いので、ここから先は、生検と書いてあれば「子宮頸部組織診」を指す、ということにさせてください。
生検は、コルポスコピーで異常のあった部分を狙って、その部位から組織をとってくるため「狙い組織診」とも呼ばれます。
このように、コルポスコピーと生検はセットになっていることがほとんどですので、ガイドラインでは「コルポスコピー・生検」と、2つをならべて記載されているわけです。
ただし、すでに拡大せずに目で見てわかるような腫瘍ができてしまっている場合には、コルポスコピーを使わずに、肉眼で生検することもあります。
生検は、生検鉗子(せいけんかんし)という専用の道具を使って数ミリの小さな肉片をとってきます。
コルポスコープで異常が確認できない場合は、「子宮頸管(しきゅうけいかん)」という、子宮頸部よりも奥にある筒になった部分に異常がみられることがあります。
その場合には、頸管内掻爬(けいかんないそうは)を行うことがあります。
頸管内掻爬のことを「頸管キュレット」と呼ぶこともあります。
検査は痛いんですか?
子宮がん検診よりは痛い可能性が高いです。
5~15分程度の短時間の検査なので基本的に無麻酔で行っており、「これくらいなら大丈夫です」という方がほとんどです。
しかし、痛みの感じ方は人それぞれで、中には耐え難い痛みを感じる方もいます。
頻度は非常に少ないですが、どうしても無麻酔で検査ができない場合には、脊椎クモ膜下麻酔、静脈麻酔、吸入麻酔などの麻酔をして検査を行うこともあります。
切り取る産婦人科医と顕微鏡で診る病理医
疑わしい病変を切り取るのは、産婦人科医の仕事です。
そして、切り取ってきた病変を、顕微鏡で診断するのが、病理医です。
病理医なくして子宮がん検診の精密検査は成り立ちません。
産婦人科医は、ときには病理医と一緒に顕微鏡をみて、議論したり、教えてもらったり、よりよい病変の採取をするにはどうしたらよいのかを考えたりしています。
病理医が診断をすることにより、生検が終了となります。
病理医が診断をするために、切り取った病変を適切に処理してから顕微鏡でみる必要があるため、検査結果が出るまで約1週間から2週間かかります。
生検には、生検を行う産婦人科医と診断を行う病理医の2者が必要である
生検後のトラブル:性器出血
子宮がん検診では、子宮の入り口をブラシなどでこする検査のため、性器出血はあってもほとんど問題にならないことが多いです。
しかし、生検は、数ミリの小さな肉片を切り取ってくる検査ですので、性器出血が多くなってしまうことがあります。
生検直後に出血が多い場合には、止血の処置として
- 圧迫・タンポン
- 電気メス
- 縫合
があります。
ほとんどが、圧迫とタンポンのみで止血されます。生検後タンポンをそのまま入れておいて、数時間後に自分で抜き取るように指示されることもあります。
電気メスや縫合で止血を行うことはとても珍しいですが、あり得ます。
検査当日は止血が得られていても、数日から1週間後くらいに再度出血してきて、止血処置が必要な場合もあります。
色のつく程度の出血であれば、ナプキンを使って対処してもらって問題ありません。
普段の月経とは違う多量の出血や塊の出てくるような出血が続くような場合は、止血の処置が必要なことがありますので、必ず産婦人科を受診するようにしてください。
コルポスコピー・生検の手順
これまで、コルポスコピーと生検を別々に解説してきました。
その理由は、コルポスコピーと生検が本来は別物だからです。
ですが、実際にはコルポスコピーと生検が同時に行われることがほとんどなので、慣習として「コルポスコピー・生検」とならべて書かれるのでしたね。
ここでは、まとめとして、
検査当日から診断結果が出るまでの「コルポスコピー・生検」の手順を箇条書きにしてみます。
- 同意書に沿って検査の説明、サインをもらう
- 内診台にのる
- 黒いクスコ(腟鏡)で子宮頸部(子宮の入り口)をみえるようにする
- 綿球などで粘液を除き、コルポスコープで観察する
- 3%酢酸に子宮頸部をひたしてからコルポスコープで観察する
- 必要があれば写真撮影を行い記録する
- 生検鉗子で疑わしい部分を切り取る(場合によっては頸管内掻爬を行う)
- 止血処置を行う
- コルポスコピーのシェーマ(絵)を書く
- 病理医が診断を行う
- 約1週間から2週間後、検査結果を説明する
コルポスコピー・生検はだいたい5分から15分程度で終わります。
ただし、出血が多くて止血処置に時間がかかる場合には、20分から長いと30分くらいかかってしまうこともあります。
検査後に「出血が多いな」と思ったら、産婦人科に相談してください。追加の止血処置が必要な場合があります。
まとめ
この記事では「コルポスコピー・生検」についてまとめてきました。
子宮がん検診で行った細胞診とは違い、精密検査であるコルポスコピー・生検は、やや時間がかかる検査になります。
精密検査は、治療が必要なのか、経過観察でよいのかを決めるために、大切な検査です。
精密検査前はとても気が重くなるかもしれません。
しかし、この検査を受けないことには方向性を決めることはできません。
産婦人科医と相談して、話し合いながら精密検査を進めていってください。