子宮がん検診を受けたら1週間から2週間程度でその結果が判明します。
「たぶん大丈夫だろう」と思って検診を受けていたとしても、結果が出るまではとても不安になるものです。
実際、子宮頸がんという病気は、「無症状でも発症していることがある」、というのが特徴ですので、その心配は無理もありません。
この記事では、子宮がん検診の結果の意味とその後の対応について簡単にまとめていきます。
ご自身の子宮がん検診の結果をみて、「その後どのような精密検査があるのか」、「産婦人科への受診の間隔はどうなるのか」、ということについてざっくりと知ることができます。
※子宮がん検診とは、このブログでは主に子宮頸がんに対する検査のことを指します。不正性器出血などの症状がある方の場合は子宮体がん検診も行われることもありますが、ここでは、子宮頸がんに対する検査のことについて説明します。
「なんで子宮がん検診をうけないといけないの?」
という疑問については、以下の記事を参考にしてみてください。
目次
子宮がん検診について解説します③【検診の結果】
子宮がん検診の結果は大文字のアルファベットをならべたものばかりです。
なので、はじめてみた人はちょっとよくわからないと思います。
では、まず1番かんたんな理解の方法をお伝えします。
です。
検査を受けると、ほとんどの人が異常ではないNILMという結果になります。
しかし、ショックだとは思いますが、ヒトパピローマウイルスという病原体が野放しにされている限り、一定数の方はNILM以外の「異常」という結果が出てしまいます。
NILM以外の項目は9項目あります。
これは、これだけたくさんの種類の病気が見つかる可能性がある、という意味ではありません。
細胞検査士や細胞診専門医がものすごく高い精度で、みつかった異常細胞をこまかく分類している、という意味だと思ってください。
実は、子宮がん検診は産婦人科医以外にも、検診の精度を高めてくれているこれらの専門家たちが支えています。
さて、いきなり説明もなく、NILMとかいうアルファベットをならべてしまってごめんなさい。
「まずこれ、なんて読めばいいんだよ!?」って感じですよね。
ご説明させていただきます。
ここからは、子宮がん検診の検査結果の項目をそれぞれみていきましょう。
NILM 【異常なし:定期検査】
「ニルム」もしくはアルファベットをそのまま「エヌアイエルエム」と読みます。
NILM:Negative for intraepithelial lesion or malignancy
日本語に訳すと「上皮内病変や悪性がない」となります。
がん検診の結果には「陰性」もしくは「異常なし」と書いてあるかと思います。
「今回の子宮がん検診では問題がなかった」ということです。
安心してもらってもよいです。
が、あくまでも今回の結果が良かったに過ぎません。
子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)によって数年間かけてゆっくりとできあがってくることが知られています。
NILMだった方でも、2年に1度は子宮がん検診を受けるようにしてください。
ASC-US 【要精密検査】
「アスカス」や「アスクユーエス」と読みます。
ASC-US:Atypical squmous cells of undetermined significance
日本語に訳すと「意義不明な異型扁平上皮細胞(いけいへんぺいじょうひさいぼう)」となります。
ASC-USの場合、結果が判明したら原則として、ただちに以下の検査を行います。
HPV検査
HPVというのはヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus)の英語の頭文字をとった略語です。そして、このHPV検査というのは、ヒトパピローマウイルスをみつけだす検査のことを言います。
子宮頸がんはHPVによって起こりやすくなってしまうことが知られておりますが、中でも子宮頸がんになりやすい奴らのことを、ハイリスクHPVと言います。
ASC-USではハイリスクHPVが約50%に検出されます。
ハイリスクHPVがいた場合
ハイリスクHPVがいた場合のことを、ハイリスクHPV陽性(ようせい)といいます。
HPV検査によって、ハイリスクHPVが陽性だった場合は、さらなる検査として以下を行います。
コルポスコピー・生検
この検査で「がん」や「異形成」の診断をします。
コルポスコピー・生検については知りたい方はこの記事を読んでみてください。
「異形成」については以下の記事で説明します。ぜひ参考にしてみてください。
ハイリスクHPVがなかった場合
ハイリスクHPVがいなかった場合のことを、ハイリスクHPV陰性(いんせい)といいます。
ハイリスクHPVが陰性の場合は、1年後に子宮がん検診を受けることになります。
例外事項
ASC-USでもHPV検査を行わない場合もある
ASC-USと診断した場合には原則としてHPV検査を行うことになってはいますが、例外的になんらかの理由があってHPV検査が実施できない病院であれば、以下の2通りの対応となることもあり得ます。
- HPV検査を行わずにコルポスコピー・生検を行う
- 6か月後と12か月後の2回の細胞診を行い、どちらか一方でもASC-US以上ならコルポスコピー・生検、2回ともNILMなら通常の2年に1回の検診にする。
※細胞診とは、子宮の入り口をこする検査の医学的な名前で、つまり「子宮がん検診」のことです
ASC-USでハイリスクHPVが陽性の場合でもコルポスコピー・生検をしない場合もある
ASC-USでハイリスクHPVが陽性の場合でも次の2つの条件があれば、コルポスコピー・生検を行わないことがあります。
- 24歳以下
- 妊婦
24歳以下の場合は、1年後の子宮がん検診を勧められる可能性があります。
妊婦の場合は、出産後にコルポスコピー・生検を勧められる可能性があります。
ASC-USまとめ
ASC-USの対応は、ここまで見ていただいたとおり、やや複雑ですのでここで一旦まとめをすることにします。
ASC-US自体は子宮がん検診の異常の中では、最も軽いものとされています。
しかし、みなさんの判断で軽いと思ってあなどってはいけません!!
必ず産婦人科に行き、医師の説明を受けて、精密検査あるいは経過観察を受けてください。放っておくのだけは、絶対にやめてください。
ASC-H 【要精密検査】
「アスクハイ」や「アスクエイチ」と読みます。
ASC-H:Atypical squamous cells cannot exclude HSIL
日本語に訳すと「HSIL(ハイシル)を除外できない異型扁平上皮細胞(いけいへんぺいじょうひさいぼう)」となります。
ASC-Hの場合、結果が判明したら、ただちに以下の検査を行います。
コルポスコピー・生検
「コルポスコピー・生検」についてはこの記事を参考にしてみてください。
LSIL 【要精密検査】
「ロウシル」と読みます。
LSIL:Low grade squamous intraepithelial lesion
日本語に訳すと「軽度扁平上皮内病変(けいどへんぺいじょうひないびょうへん)」となります。
LSILの場合、結果が判明したら原則として、ただちに以下の検査を行います。
コルポスコピー・生検
「コルポスコピー・生検」についてはこの記事で解説しています。参考にしてみてください。
例外事項
LSILでは、以下の場合にはコルポスコピー・生検を行わない場合があります。
- 24歳以下
- 妊婦
24歳以下の場合は、1年後の子宮がん検診を勧められる可能性があります。
妊婦の場合は、出産後にコルポスコピー・生検を勧められる可能性があります。
HSIL 【要精密検査】
「ハイシル」と読みます。
HSIL:High grade squamous intraepithelial lesion
日本語に訳すと「高度扁平上皮内病変(こうどへんぺいじょうひないびょうへん)」となります。
HSILの場合、結果が判明したら、ただちに以下の検査を行います。
コルポスコピー・生検
「コルポスコピー・生検」についてはこちらの記事で解説しています。
SCC 【要精密検査】
「エスシーシー」と読みます。
SCC:Squamous cell carcinoma
日本語に訳すと「扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)」となります。
ASC-USの場合、結果が判明したら、ただちに以下の検査を行います。
コルポスコピー・生検
「コルポスコピー・生検」については以下の記事で解説しています。
SCCは、子宮頸がんであることを意味します。
しかし、子宮がん検診の段階では、まだ仮の結果なので、生検によってしっかりと病変部をとってきて確定診断をする必要があります。
肉眼で確認できないような病変であればコルポスコピーをして生検します。
すでに肉眼で確認できるような大きいがんになってしまっていれば、直接目で見て生検することもあります。
生検で診断が確定したら、経腟超音波検査・CT検査・MRI検査などを追加の検査を行い、病期を判定して、治療法の選択を行っていきます。
「子宮頸がんに対する検査」については別の記事で説明します。
AGC 【要精密検査】
「エージーシー」と読みます。
AGC:Atypical glandular cells
日本語に訳すと「異型腺細胞(いけいせんさいぼう)」となります。
AGCの場合、結果が判明したら、ただちに以下の検査を行います。
・コルポスコピー・生検
・子宮頸管の細胞診もしくは組織診
・子宮内膜の細胞診もしくは組織診
「コルポスコピー・生検」については以下の記事で解説しています。ぜひ読んでみてください
AGCの場合は子宮体がんという、子宮体部(子宮の上の方)にできるがんである場合もあるので、子宮頸管もしくは子宮内膜組織診を行います。
子宮内膜組織診は、子宮頸部よりも上にある子宮体部の子宮内膜という部分から組織を採取する検査のことをいいます。
AIS 【要精密検査】
「エーアイエス」と読みます。
AIS:Adenocarcinoma in situ
日本語に訳すと「上皮内腺癌(じょうひないせんがん)」となります。
AISの場合、結果が判明したら原則として、ただちに以下の検査を行います。
・コルポスコピー・生検
・子宮頸管の細胞診もしくは組織診
・子宮内膜の細胞診もしくは組織診
「コルポスコピー・生検」については以下の記事を参考にしてください。
AISの場合は子宮体がんという、子宮体部(子宮の上の方)にできるがんである場合もあります。
なのでAGCのときと同様に、子宮内膜に対する検査を追加して行います。
Adenocarcinoma 【要精密検査】
「アデノカルチノーマ」や、ちょっと英語っぽく「アデノカーシノーマ」と読みます。
日本語で「腺癌(せんがん)」という意味です。
Adenocarcinomaの場合、結果が判明したら、ただちに以下の検査を行います。
・コルポスコピー・生検
・子宮頸管の細胞診もしくは組織診
・子宮内膜の細胞診もしくは組織診
「コルポスコピー・生検」についてはこの記事で説明しています。
Adenocarcinomaの場合は子宮体がんという、子宮体部(子宮の上の方)にできるがんである場合もあります。
子宮体がんに対する検査である、子宮内膜細胞診や子宮内膜生検を行うことがあります。
Other malignancy 【要精密検査】
「アザーマリグナンシー」と読みます。
日本語で「その他の悪性腫瘍」という意味です。
Other malignancyの場合、結果が判明したら原則として、ただちに以下の検査を行います。
・コルポスコピー・生検
・その他の病変を探す
「コルポスコピー・生検」については以下の記事にまとめてあります。参考にしてみてください。
Other malignancyでは、他の部位からの腫瘍の転移の可能性もありますので、採血して腫瘍マーカーの検査や全身CTを行うことがあります。
コルポスコピー・生検でで採取した組織を元に、病理医により発生源(原発)となる臓器を推定できた場合は、さらなる精密検査を追加していきます。
まとめ
この記事では、子宮がん検診の結果について解説してきました。
最後に私から2つメッセージがあります。
NILMだった方へ
NILMの項目でも書きましたが、あくまでも今回は異常なしだったに過ぎません。
こんなこと考えたくないかもしれませんが、子宮頸がんはHPVによって数年間かけてゆっくりとできてくることがありえます。
検診は苦痛かもしれませんが、なにも症状がなくても2年に1度は子宮がん検診に行くようにしてください。
ぜひともお願いします。
異常が見つかってしまった方へ
「本当にがんだったらどうしよう」、「今後どうなってしまうのだろう」と不安で頭がいっぱいになっている方もいるかもしれません。
必ず産婦人科に行って適切な精密検査を受けに行ってください。
早期がんでみつかれば根本的な治療が望めます。
進行がんであれば根本的な治療は難しいかもしれませんが、有効な治療法はあります。
1人で説明を聞きにいくと不安だったり、冷静になれない、という方はご家族などにお願いして一緒に病院に来て説明に立ち会ってもらうと、少し落ち着けるかもしれません。
産婦人科で今後どのように検査や治療を進めていくのか、医師の説明を受けて、まずは落ち着いて話を聞いてください。