20歳以上の女性に推奨されている子宮がん検診。
この記事では、「子宮がん検診を受けよう」と決めて、実際に産婦人科に受診する当日のことについて解説します。
「どんな準備をしていけばいいの?」
「検査はどんなふうにやるの?」
「検査は痛くないの?」
「女の先生は選べるの?」
といった疑問についておこたえしていこうと思います。
「子宮がん検診なんて知らないよ」っていう人や「市からお知らせが届いたけど、産婦人科に行くのは抵抗があってまだ行けていない」という人もいるのではないでしょうか?
そんな方は、以下の記事が参考になると思います。こちらの記事もあわせて読んでみてくださいね。
目次
子宮がん検診について解説します②【検診の当日】
どんな準備をしていけばいいの?
当日の持ち物
医療機関(産婦人科のクリニックや総合病院)を受診して子宮がん検診を受ける場合、以下のものを持っていくとよいでしょう。
- 健康保険証
- 補助券
(受診券、受診票、クーポン券など発行する市町村によって名称がちがいます) - 病院の診察券
(受診する病院にかかったことがあれば持っていく方がいいです)
これだけあればスムーズに受付を済ませることができます。
しっかり準備したつもりでも、「うっかり忘れてしまった!」ということもあるかもしれません。そのときの対応についても説明しておきます。
忘れてしまっても受付の人がどうしたらよいか教えてくれますので安心してください。
健康保険証を忘れてしまった
子宮がん検診を補助券で受ける場合は、保険診療には当たりませんので健康保険証は必要ではないこともあります。しかし、個人を特定するために運転免許証など他の身分証明書が必要になるかもしれません。
当日、担当医師と相談して子宮がん検診だけではなく、超音波検査や子宮頚管ポリープ切除なども受けるときには保険診療を実施することもあります。その場合は、後日、健康保険証を病院に提出することを受付でお願いされるでしょう。
補助券を忘れてしまった(失くしてしまった)
補助券は発行する市町村により受診券、受診票、クーポン券など、名称が違います。つまり、補助券を忘れてしまった、あるいは、失くしてしまったときには、お住いの地域により対応の方法に少しちがいがあります。
- 補助券がなくても病院で補助券の扱いにしてくれる
- 補助券が家にあれば、後日、病院に提出する
- 補助券を失くしてなってしまったら、再発行をして病院に提出する
病院に受診する前に補助券を失くしてしまっていることが分かっている場合には、まずは受診したい医療機関にどうすればよいか聞いてみてください。再発行する必要がないこともありますので。
再発行が必要な場合は市役所または保健所、保健センターに問い合わせて、再発行手続きの仕方を教えてもらってください。
病院の診察券を忘れてしまった
診察券を忘れてしまった場合、健康保険証などで個人の特定は必要になるでしょう。そして、いつもより受付に少し時間がかかってしまうかもしれません。
初めて受診する方はそもそも持っていないものですので、健康保険証の提出を求められることになります。
どんな服装でいけばいいの?
どんな服装でも構いません。
でも、1つアドバイスをするならば、
スカートやワンピースの方が楽!
です。
子宮がん検診は子宮の入り口を直接見て、そこをブラシなどでこする検査ですので、下半身はすべて脱いだ状態での検査になります。
産婦人科の受診に慣れている方は、診察をスムーズにするために脱がなくてもめくりあげるだけですむスカートやワンピースを選んで来てくれていることもあります。
とはいえ、産婦人科医としては、どんな服装でもなにも気にしません。
検査を受ける方が、ズボンだと脱いだりはいたりがちょっとめんどくさい、というだけです。
病院の人間ドックのときに子宮がん検診を一緒に受ける方であれば、いろいろな検査がしやすく、かつ、ご自身の服も汚れないようにと、検査前に病院が用意してくれた検査着に着替えてもらうこともあります。
・どんな服装でもいいけど、スカートやワンピースがおすすめ
・ズボンだと脱いだりはいたりがめんどくさい
・専用の検査着に着替えてもらう場合もある
乳がん検診と子宮がん検診を一緒に受ける場合は下はスカートの上下セパレートでがいい
乳がん検診は上半身を完全に脱いだ状態で乳房を検査します。
ワンピースで来てしまうと、いったん上下ともにスッポンポンにならないといけないという事態が発生します。(でも、ちゃんと検査着は貸してくれることが多いです)
子宮がん検診のみであればワンピースもおすすめですが、乳がん検診と子宮がん検診のどちらも一緒に受ける予定ならば、下はスカートの上下セパレートで来院すると、スムーズに検査が受けられます。
乳がん検診もいっしょに受けるなら、下はスカートで上下セパレートになる服装が良い
あとは心の準備
先ほども少し書いたように、子宮がん検診は子宮の入り口を直接見ないとできない検査なので、下半身は脱いだ状態での検査になります。
なので、のどやおなかの診察にくらべると、とても羞恥心や恐怖心をともなう検査になります。
これまでに子宮がん検診を受けたことがあったり、妊娠や分娩のときになんども内診を受けたことがある方でも、子宮がん検診の診察のときにはずかしさやこわさを感じるものです。
もし、「はじめて検診を受けるよ」、という方であればなおさらで、当然こわいし抵抗感があると思います。
でもやっぱり、20歳以上になったら子宮がん検診を受けるメリットはあるので、
子宮がん検診について知ることによって心の準備をしてもらって
なんとか、その恐怖を少しでも弱められるといいな、と思うのです。
ここで、心の準備の大切さがわかる「プレパレーション」について紹介します。
小児科で行われる「プレパレーション」という技術を応用しよう
小児看護の技術の1つに「プレパレーション」というものがあります。
プレパレーションとは、手術や治療、検査が必要な患者である子供に、人形や絵を使って説明をしたり、練習をさせたりして、恐怖心や不安を最小限にして、自分の意志によって処置が受けられるように促すこと
恐怖心や不安感は、ゼロにはできませんが、これから起こるできごとを知る・理解することによって少し弱めることはできる、ということです。
これは大人も同じです。
これからなにされるかわからなければ、だれでもこわいし嫌です。
子宮がん検診についてちょっとでも理解をしておけば、少しは恐怖心がうすまるのではないでしょうか。
ここから先の記事は、検査のやり方、痛いのかどうかなど、子宮がん検診を受けるのが「いやだな」と思われている理由になっていそうな項目についての解説となります。
おとなであるみなさんは、ここから先の記事を読むことにより、自己プレパレーションをしてみてください。
ちなみに自己プレパレーションなどという医学用語や看護学用語はありません。完全に私の造語です。
自己プレパレーションによって少しでも心の準備ができて、子宮がん検診に対する恐怖心がちょっとでも減らせることを願っています。
検査はどんなふうにやるの?
子宮がん検診は子宮の入り口である子宮頸部(しきゅうけいぶ)という部位を直接見て、そこをブラシなどでこすって、細胞を採取する検査です。
簡単な問診を受けてから子宮がん検診がはじまります。
以下に検査の手順を書いてみます。
- 内診室に入る
- 下半身の衣類をすべて脱ぐ(スカートならめくりあげて下着だけ脱ぐ)
- 内診台にのる
- クスコ(腟鏡)を腟内に挿入して子宮頸部を確認する
- ブラシやヘラで子宮頸部をこすって細胞を採取する
- 検査終了
いろんな用語がでてきたので、これらについても説明しておきます。
「内診室」ってなに?
文字通り、「内診」を行う部屋です。内診台という内診を行うための専用の台が置いてあります。
「産婦人科で診察といえば内診に決まってるでしょ」っていうことで、病院によっては内診室ではなく、診察室と呼ばれていることもあります。
内診は、産婦人科医の基本技術のひとつです。内診とはなにか、ということについては別の記事を書く予定です。
内診台ってどんなの?
内診を行う専用の台です。ベッド上では十分な診察がしにくいため、きちんとした診察をするために使います。
アトムメディカルという大手の産婦人科医療機器メーカーのホームページにわかりやすい内診台の画像があったので、それをおかりして説明します。
https://www.atomed.co.jp/product/cat_gynecology/001.html
↑これはよく使われている内診台の形の1つです。
まず、いすと同じように内診台に座ります。診察をするときには、スイッチを押すと台がゆっくり上昇しながら後ろに倒れていきます。それと同時に両足が開く体勢になります。
↑実際の診察の体勢です。
ベッドと違い、おしりの下にじゃまになるものがないことや両足をしっかり開くことができるため、十分な診察が可能です。
私は男性ですが、経験のために内診台にのって診察の体勢になったことがあります。下半身は出さずにですが、足を開いた状態で同僚に囲まれるという貴重な(?)体験をしました。これだけでもとても恥ずかしい気持ちになりましたので、これでいざ診察を受けるとなると恐怖心がでてくるのも理解できます。
とても恥ずかしい姿勢で診察することになるので、羞恥心に配慮するためにカーテンをして医師と直接目が合わないようにしているところが多いと思います。
逆にカーテンがあると、なにをされているか見えないから嫌だという方もいますので、カーテンがいやな方は申し出るとよいでしょう。
また、内診台の開脚はあらかじめ設定された角度まで開きます。
股関節や膝が悪い方が内診台の開脚により、関節を痛めてしまったり、股関節が人工関節の方は脱臼してしまう恐れもあります。開脚で痛みが出てしまう方や股関節や膝関節の手術を受けたことがあるという方は、申し出てもらえるとよいです。少し検査しにくくはなりますが、開脚の角度を少なくして診察することもできます。
「クスコ(腟鏡)」ってなに?
クスコは先を閉じた状態で膣から挿入して、ある程度進めてから先を開いて腟や子宮頸部をみえるようにすることで診察をする器具です。
クスコは腟鏡と呼ばれる器具の1つで、違う名前の腟鏡(桜井、ジモン、安藤など)もあります。
子宮がん検診や普通の産婦人科での診察ではクスコが使われることが多いと思います。
https://www.atomed.co.jp/product/pdf/instruments_01.pdf
↑これがクスコです。
左側が腟に入れる方です。右上の部分を操作してクスコの先端の開閉して開き具合を調節します。
金属のものを使うことが多いですが、自治体の行う集団検診では受ける人数が多く器具を洗う手間を省くために、使い切りのプラスチック製のものを使うことがあります。
サイズもいろいろありますので、クスコを入れたときに痛みがでてしまうときには小さいもので検査をすることがあります。
婦人科の受診に慣れている方の中には内診の前に「小さいやつでお願いね」と言ってくれる方もいます。
「ブラシ」や「ヘラ」ってどんなやつなの?
子宮がん検診での細胞の採取はブラシやヘラを使うことが推奨されています。綿棒でも採取することができますが、検査が不十分になってしまうことが指摘されています。
ただし、ブラシやヘラはしっかりと細胞がとれる分、出血しやすいです。出血といっても茶色いおりものが一時的に出る程度のことがほとんどです。
妊娠している女性では出血をきらって綿棒を用いて検査することもあります。
たとえば、妊娠をきっかけに産婦人科を受診して子宮がん検診を行うときは、綿棒を使うこともあります。
検査って痛くないの?
子宮がん検診の痛みは、ほとんどの方ががまんできる程度の軽度の痛みだけなのですが、
まったく痛くない人もいれば、とっても痛いという人もいます。
ほんとうに人それぞれだと感じています。
それと検査中のどこで痛みを感じるか、というのも人それぞれです。
検査中に痛みを感じやすいポイントは3つあります。
・内診台にのって足を開くとき
・クスコを腟に挿入するとき
・子宮頸部をブラシやヘラなどでこするとき
以下に、それぞれの痛みの対策についてあわせて書いてみます。
内診台にのって足を開くとき
股関節や膝関節を痛めている方は、内診台にのって開脚するときに痛みを感じることがあります。
検査前に申し出てもらうと、足の開きを狭くして検査することもできます。
検査中に痛みが出てきた場合も、足を少し閉じてもらうようにお願いするとよいでしょう。
クスコを腟に挿入するとき
1番痛みを感じやすいのはこのときではないか、と思っています。
とくに、この2つ。
・クスコを入れるとき
・腟内でクスコを開くとき
クスコを入れるときは、クスコをぬらしたり、外陰部にぬるま湯をかけたりして、挿入時に滑りをよくしてできるだけ痛くないようにしている先生が多いのではないかと思います。
ゆっくりやさしく挿入することも痛みがでにくくできるポイントです。
挿入時にけっこう痛い場合にはクスコのサイズを小さくしてもらうのもよいでしょう。
腟内でクスコを開いてから、すぐに子宮頸部があれば痛みを少なくできるのですが、人によってはとっても奥の方に子宮頸部があることがあります。
その場合はクスコをグッと奥の方に押し込んで子宮頸部をしっかり観察できる位置にもってくる必要があります。
この“グッ”のときは痛みを感じやすいかもしれません。
子宮頸部の位置には個人差があり、しっかりと正しい部分から細胞を採取するためには、このときだけはちょっとだけ我慢してもらうことが必要になることもあります。
子宮の入り口(子宮頸部)をブラシなどでこするとき
子宮がん検診でもっとも重要なところです。
十分な細胞をとるためには、子宮頸部をこする必要があります。でも、そんなに強い力では行わないので安心してください。
違和感のだけしか感じない人が多いと思います。
女性の先生は選べるんですか?
病院によっては、女性の先生がたくさん在籍していれば指定することもできます。
しかし、女性の先生はいるけど人数が少ない場合には選べないでしょう。
女性の先生を希望されている方はたくさんいるので、その女性の先生ばかりが忙しくなってしまうことを防ぐ必要があるからです。
また、「女性医師を希望するなんて、良くない」という意見を持っている人もいますが、私はその意見にはどちらかというと反対です。
なぜなら、
女性の先生であれば子宮がん検診を受けてくれるんだったら、検診を受けないよりもよっぽどいい
と思うからです。
「女性の先生なら子宮がん検診を受けてくれる」、という人にアドバイスです。
女性の先生に子宮がん検診をしてもらいたいなら、
- 行こうとしている病院やクリニックに問い合わせて、女性の先生を指定できるかを聞く
- 女性の先生が指定できるところがないなら、ホームページなどで調べて在籍している女性の先生が多い病院に受診する。
指定できない場合でも、できるだけ女性の先生が多い医療機関を選べば女性の先生にあたる確率は上がります。
医療機関側もどうにか患者さんの希望に添えるようには努力をしているはずです。
でも、どうしても男性の先生しか診察できないという場合があることもご理解いただきたいと思います。
私の診ている患者さんで、元々強く女性の先生を希望されていた方がいますが、ある時から男性である私を希望するようになった、ということもあります。
まとめ
この記事では、検診の当日、「どんな準備をしていけばいいの?」、「検査はどんなふうにやるの?」、「検査は痛くないの?」、「女の先生は選べるの?」といった疑問について解説してきました。
「検診を受ける当日のイメージができたよ」っておもってくれていたらうれしいです。
子宮がん検診について理解してもらうことで、2年に1度の検診への恐怖心や不安が少しでもなくなってくれることを願っています。