子宮頸がん

異形成について【子宮がん検診の精密検査の結果】

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子宮がん検診で「異常あり」と診断された場合、精密検査を受けます。

精密検査には、主にHPV検査とコルポスコピー・生検があります。

「子宮がん検診の結果」や「コルポスコピー・生検」について知りたい方は以下の記事を読んでみてください。

この記事では、精密検査のコルポスコピー・生検で診断される「異形成(いけいせい)」について解説していきます。

異形成について【子宮がん検診の精密検査の結果】

正式名称は「子宮頸部異形成(しきゅうけいぶいけいせい)」です。

子宮頸部異形成は、子宮頸がんの前がん病変です。

前がん病変とは、

現状ではがんとは言えないががんに進行する確率が高い状態

国立がん研究センター がん情報サービス - 異形成

と定義されています。

つまり、子宮頸部異形成はがんではないが、完全に安心できる状態とは言えない、ということです。

さらに言えば、その種類によっては、早期がんが隠れている場合もあります。

子宮頸部異形成は、軽度異形成中等度異形成高度異形成上皮内腺癌の4つに分類され、異形成の種類によって今後の対応が変わってきます。

ここからは、4つの異形成についてそれぞれ説明していきます。

軽度異形成:LSIL/CIN1

軽度異形成(けいどいけいせい)はLSIL/CIN1もしくはCIN1と書かれることもあります。

子宮頸部異形成の中では一番悪くない結果ではあります。

軽度異形成の大部分は自然消失するとされ、とくに30歳未満では90%が悪くなることなく消失するとされます。

しかし、12~16%は高度異形成(HSIL/CIN3)やがんに進行すると言われています。

大部分は消失するが、進行することがある

なので、油断は禁物です。

必ず産婦人科で説明を受けたとおりに病院に通ってください。

軽いと思って放っておくのは絶対にやめてください!

「軽度異形成:LSIL/CIN1と診断されたらどのようにするのか?」については2通りあります。

①ハイリスクHPV検査の結果により子宮がん検診(細胞診)の間隔をかえる

こちらの方法は、軽度異形成と診断されたら、まずハイリスクHPVを検査して、その結果によって子宮がん検診(細胞診)の間隔を変えます。

子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスによって発症しやすくなることが知られています。

特に、ハイリスクHPVはHPVの中でも子宮頸がんになりやすいとされているものです。

ハイリスクHPVがいたら「リスクが高い」つまり「悪化する可能性が高い」と判断して受診の間隔を短くします。

ハイリスクHPVがいなければ「リスクが低い」つまり「悪化する可能性が低い」と判断して受診の間隔を長くできます。

具体的には以下のようにします。

  • ハイリスクHPVがいた場合 → 4~6か月ごとの細胞診
  • ハイリスクHPVがいない場合 → 12か月ごとの細胞診

「子宮がん検診で異常なのにハイリスクHPVがいないだけで、次の受診を1年もあけていいの?」

と思う方もいるかもしれません。

これで構いません。問題ないです。

ハイリスクHPVがいなければ悪化するリスクはとても低いのです

逆に言えば、ハイリスクHPVはとても恐ろしい、ということを意味しています。

②6か月ごとの子宮がん検診(細胞診)【ハイリスクHPV検査を行わない場合】

前に書いたように、軽度異形成は消失することがほとんどです。

もしHPVに感染していたとしても、進行は年単位であることが多いです。

ハイリスクHPV検査を行わない場合、6か月ごとに子宮がん検診と同じ検査である「細胞診」を受けてもらって悪くならないかみていきます。

必要に応じてコルポスコピーも一緒に行うことがあります。

中等度異形成:HSIL/CIN2

中等度異形成(ちゅうとうどいけいせい)はHSIL/CIN2もしくはCIN2と書かれることもあります。

中等度異形成は軽度異形成ほどではありませんが、消失することもよくみられます。

しかし、進行する確率は22~25%あるとされており、危険性は軽度異形成よりも高いです。

異常がなくなることもあるが、進行することがある

中等度異形成と診断されたら、必ず産婦人科で説明を受けて病院にかよってください。

悪くなってこないか見張っておく必要があります。

そして、中等度異形成では手術を勧められることがありますので、このことについても解説したいと思います。

「中等度異形成:HSIL/CIN2と診断されたらどのようにするのか?」については2通りあります。

①ハイリスクHPV検査の結果により子宮がん検診(細胞診)の間隔をかえる【手術も検討】

中等度異形成と診断されたら、まずハイリスクHPVを検査します。

子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスによって発症しやすくなることが知られています。

特に、ハイリスクHPVはHPVの中でも子宮頸がんになりやすいとされているものです。

ハイリスクHPVがいたら「リスクが高い」つまり「悪化する可能性が高い」と判断して受診の間隔を短くします。

ハイリスクHPVがいなければ「リスクが低い」つまり「悪化する可能性が低い」と判断して受診の間隔を長くできます。

具体的には以下のようにします。

  • ハイリスクHPVがいた場合 → 3~4か月ごとの細胞診
  • ハイリスクHPVがいない場合 → 6か月ごとの細胞診

軽度異形成よりも厳重な警戒が必要なので、細胞診の間隔は短くなります。

ただし、中等度異形成にはハイリスクHPVがいた場合に手術が検討される場合もあります。

ハイリスクHPVがいた場合、以外にも中等度異形成では手術が検討される条件がありますので、次の項目でまとめてご説明することにします。

中等度異形成で手術が検討される場合

中等度異形成では、以下の4つの場合に手術を検討することがあります。

  1. 1~2年しても自然に消えない
  2. ハイリスクHPVが陽性
  3. 患者本人の強い希望
  4. 継続的な受診が困難

ただし、妊娠中の方には手術は勧められません。

手術の方法には、円錐切除術、LEEP(リープ,loop electrosurgical excision procedure)、レーザー蒸散などがあります。詳細については今後記事にする予定です。

②3~6か月ごとの子宮がん検診(細胞診)とコルポスコピー【ハイリスクHPV検査を行わない場合】

中等度異形成は消失することも相当数あり、もしHPVに感染していたとしても、進行は年単位であることが多いです。

ハイリスクHPV検査を行わない場合、3~6か月ごとに子宮がん検診と同じ検査である「細胞診」とコルポスコピーを受けてもらって悪くならないかみていきます。

細胞診に加えてコルポスコピーも一緒に行って、軽度異形成よりもさらに厳重にみていくことが必要になります。

高度異形成:HSIL/CIN3

高度異形成(こうどいけいせい)はHSIL/CIN3もしくはCIN3と書かれることもあります。

高度異形成では、がんが併存している可能性があります。

したがって、コルポスコピー・生検で高度異形成と診断された場合、原則として円錐切除術を行います

円錐切除術については後日記事にしたいと思っています。

高度異形成で円錐切除術を行う理由が2つあります。

  1. 診断をつけるため
  2. 高度異形成を取り除く治療のため

コルポスコピー・生検では子宮頸部から数ミリの小さな肉片をちぎりとってくる検査です。

高度異形成の場合、もう少し大きくとればがんが見つかる可能性があるため、円錐切除術は「がんをみつける」という大きな目的があります。

円錐切除術を行い、がんはみつからず、高度異形成という最終診断であれば「高度異形成を切除した」という治療になります。診断が高度異形成までであれば、これが治療になる、というわけです。

円錐切除術は「検査」と「治療」の2つの側面がある

以下の場合に、円錐切除術を行わずに単純子宮全摘術を行う場合があります。

  1. 子宮温存を希望しない(妊娠の希望がない)
  2. 閉経後

いずれの場合も術前検査で浸潤癌ではないことを十分に精査する必要があります。

上皮内腺癌:AIS

“癌”と名前についていますが、前がん病変です。

AISは子宮頸部腺がんの前がん病変で、CIN1・CIN2・CIN3とは別物として分類されています。

病理学的な話になりますが、

  • CIN1~3は扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)の前がん病変
  • AISは腺がん(せんがん)の前がん病変

と定義されます。

ちなみに、子宮頸がんでは扁平上皮がんが約75%、腺がんが約23%を占めており、年々腺がんの割合が上昇しているといわれています。

もちろん、HPV(ヒトパピローマウイルス)はAISの原因にもなっています。

コルポスコピー・生検でAISと診断された場合は、原則として円錐切除術を行います

AISの場合、円錐切除術を行う理由は

  1. 診断するため

です。

AISの場合、円錐切除術でとりきれたと診断されても、約20%に遺残病変が発見されるという報告があります。

したがって、最終診断がAISであれば、単純子宮全摘術が推奨されています。

まとめ

この記事では、コルポスコピー・生検で診断される「異形成」について解説しました。

それぞれ今後の方針が変わってくることがわかっていただけたのではないでしょうか?

治療については、患者さんの背景によって変わってくることがありますので、主治医の先生とよく相談して方向を決めていってください。

参考文献:

・産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020

・子宮頸癌治療ガイドライン 2017年版

・子宮頸癌取扱い規約 臨床編 第4版. 2020

・宇津木久仁子、杉山裕子. 外来で行う 子宮頸がん・体がん診断 早期発見のポイント. 2020